2021年10月に行われた音楽コンクールの最高峰「ショパン国際ピアノコンクール」で日本人としては半世紀ぶりの2位の快挙を成し遂げた反田恭平さんと4位の小林愛実さん。
幼馴染で普段からも仲の良い二人がなぜVS(ヴァーサス)なのでしょうか。
12月に東京芸術劇場で行われた、お2人のコンサートに実際に出かけてきましたのでレポートしていきたいと思います。
もくじ
決戦の舞台となったのはガラス張りの芸術の総合施設
ショパンコンクールで2位と4位のお二人がコンクールときき、興奮冷めやらぬ12月8日。
VSシリーズの第1弾として、池袋にある芸術の複合施設東京芸術劇場にて行われました。
このコンサートが企画されたのはもちろんコンクールより前の事でしたので、その後行われたショパン国際ピアノコンクールでの快挙により、思わぬ豪華な顔ぶれになったのです。
反田さんも小林愛実さんもコンクールの前から人気は大変なものでしたので、これからますますプラチナチケットになること間違いないでしょう。
アララン
東京芸術劇場はJR・東京メトロ・東武東上線・西武池袋線の池袋駅にあります。
私は東京駅より山手線一本で向かいました。駅を降りて西口よりすぐです。
地下よりエスカレーターで地上に上がり進むと公園の中にガラス張りの建物が見えてきます。
あいにくの雨でしたが美しい建物です。こんな素晴らしい建築のコンサートホールに立てるなんてすごいなあと、単純な感動をしてしまう。
永遠と続くエレベーターと赤い椅子のコンサートホール
演奏会への入り口は長いエレベーター
東京芸術劇場は演劇場、コンサートホール、その他イベントや講座に使われる総合芸術文化施設です。
そのうちコンサートホールは5階にあり入場口まではエスカレーターを乗り継いでいく事になります。
もちろんエレベーターを使う事も出来ますが美しいガラス張りの建築を見ながらのエスカレーターで向かうことにしました。
コンサートホールに着いてからも上位階へ向かうにはまたエスカレーターを使う事になります。これだけエスカレーターを乗り継いで向かうホールも珍しいのでは無いでしょうか。
ホールへはすぐには入れずロビーで待機することに
途中でコンサートプログラムを手に入れ、ロビーまで来ましたが少し早めに到着したためロビーで待機します。
水を飲んで咳が出ないようにしたりトイレに行ったり、携帯の電源を切る前の諸々の連絡に費やしたりしました。
アララン
BGMは調律音、まるでピアノの森
中に入るとスタンインウェイがピアノの曲線を合わせるように2台置いてありました。
今回、私は3階席でしたがステージは十分に見渡せます。
上から照明が当てられ、木の葉がたくさんピアノにこぼれています。森の中に置かれたような演出。
照明によってピアノの森のような演出がされていてそれだけで、もう感動。
そして調律の方がずっと音を鳴らしています。なんとも心地の良い調律音。
まさに天井席?三階席は天井に頭が着く?
私はチケット発売から結構経ってから購入したので3階席でしたが、そのさらに後ろのほうはかなり天井の近くぎりぎりまで客席が作られていました。
開演が近づくにつれ、どんどん客席が埋まっていきます。
客層としては年配の方から一人で来ている若い男性や女性、小学生の子供を連れた親子など様々な年齢層に注目されているのがわかります。
アララン
反田恭平さん・小林愛実さんの生演奏に感動!
開演が近づくと時計のアラームが鳴り開演の合図。
その後、開演に先立ちアナウンスが流れます。
その中で印象的だったのが「補聴器が正しく装着されているか今一度お確かめください」というもの。
会場の照明が落ち、満員の会場がシーンと静まり返ります。
舞台左側からお2人揃って登場。静まり返っていた会場が一気に湧きます。
そしてピアノの前に並んで立ち、お互い顔を見合わせて(せーのっ!)て感じで客席に頭を下げられました。
幼馴染の感じが伝わってきます。
そしてすぐにピアノに向かいました。
反田恭平さんが左側、小林愛実さんが右側のピアノに座りました。
楽譜をめくる方もついていました。
後で調べてみたいのですが譜めくりと言うそうですね、初めて知りました。
その方たちも椅子に腰かけ、めくる時だけ立ってめくっていました。
登場のドレスは?
コンサートで楽しみの1つに出演者の衣装がありますが、
反田恭平さんはショパンコンクールでも着用していた燕尾服で小林愛実さんは真っなドレス。
背中も胸元もざっくりと開いた素敵もの。少し引きずりながら歩く姿はとても美しい。
ショパンコンクールでも思いましたが、なにかお手入れされているのか、お肌が抜群にキレイです。
ピアニストの方は聴かせる職業でもあり、魅せる職業でもあるんですね改めて感じました。
息ピッタリのピアノ・デュオ
舞台に立ち一礼する時には(せーのっ!)とタイミングを合わせていた二人でしたが、演奏を始める時は大きく合わせることなく一瞬にして演奏に入る。
そして息もぴったりの演奏。幼馴染だからこそのなせる業なのでしょうか…。
VSと銘打たれていますが、お2人のピアノ・デュオはとても温かくぬくもりの感じられる演奏でした。
登場の際のトークは?
登場はほぼ同時に入ってこられますが、反田恭平さんは堂々とゆっくり。小林愛実さんはドレスをなびかせ少し早歩きで舞台中央へ。
今回は一切、トークは無かったのですが舞台にいるだけでお二人が仲が良いのが伝わってきました。
そして退場の際も、一緒に退場するのですが必ず先に小林さんが舞台袖に入られます。
「VS」Vol.1 プログラム
モーツァルト 2台のピアノのためのソナタ 二長調 KV448
二ノ宮知子の漫画作品「のだめカンタービレ」でのだめと千秋真一が初共演した曲。心が躍るようなリズムで演奏会の始まりにふさわしい曲でした。
ショパンコンクールでの活躍もあり、あちこちに引っ張りだこのお2人ですから一緒に練習する機会はそんなに取れなかったであろう事が想像されますが、そんな事を微塵も感じさせない素晴らしい共鳴です。心地の良い演奏に一緒になって手拍子したくなる気持ちです。
1st:小林 2st:反田 となっていました。
シューマン 小さな子供と大きな大人のための12の連弾小品OP.85より「庭園のメロディ」
2人で1つの椅子に座り左側のピアノで演奏されていました。
やはり大きく合わせることなくスーと演奏に入られます。
ルトスワフスキ パガニーニの主題による変奏曲
時折、立ち上がらんばかりに力強く演奏される小林愛実さんです。めちゃくちゃかっこいいです。
演奏後はかなりの大きな拍手です。
そしてここで一旦退場、20分間の休憩に入ります。
ロビーではバーのような物が設けられていますがコロナの影響でしょうか閉鎖されていました。
トイレはやはり長蛇の列ですがわりと進んでました。
シューベルト 幻想曲 へ短調op103D940
2人で1台のピアノで演奏する連弾、VSシリーズで言うピアノ・デュオです。
椅子が2台用意され、縦に置かれました。
距離感なくぴったりくっついての演奏にほのぼのします。
ブラームス ハイドンの主題による変奏曲 op56b
プログラムはここまでですが、私もですが皆さんやはりアンコールを期待します。
声は出せませんから、思いっきりの拍手で感動を伝えます。
「VS」Vol.1 アンコール曲
アンコールの拍手に応えてくださるお2人。
アンコールはお1人ずつ演奏されていました。
反田恭平さん ショパン「マズルカ34番」
反田さんはショパンのマズルカを演奏されていました。
アンコールが始まった瞬間に「ショパンだ!」と生で聞く反田さんのショパンに胸がジーンとしてきて、しかもマズルカ!
今まではYouTubeでの配信をiPhoneの小さな画面で見ていた私は、マズルカの生演奏に感動し人生で初めて音楽で涙が溢れて止まりませんでした。
よく反田さんの演奏を聞かれた観客の方がインタビューで「涙が出てくる」と言っていたのがこれか!と、初めて感じることができました。
メガネは曇るわ、マスクは濡れるわ、ハンカチで涙をこっそり拭うのが大変でした。
小林愛実さん ショパン「24の前奏曲17番」
続いて2番目の小林さんも同じくショパンを弾かれました。
ショパン国際コンクールで入賞された方のショパンに涙が止まりませんでした。
観客の皆さんもショパンコンクールでの活躍を見ていた方ばかりでしょうから熱気が違いました。
アンコールの拍手に応え、舞台袖から現れたお2人。
もうこれで最後かと席を立たれる方も出てきたその時、もう1度お2人が舞台に現れて、皆さん慌てて席に戻られるというわちゃわちゃ感(笑)
なんともあたたかいリサイタル。
アララン
シューマン 連弾小品より12番「夕べの歌」3番「庭園のメロディー」
これで最後かな…としみじみ演奏に聞き入りました。
終始、お2人の息の合った演奏と仲の良い雰囲気に包まれ、観客の熱量と共にほんとに素晴らしいリサイタルでした。
もしかしたらもうこのお2人でのリサイタルは、今後ないかもしれない…と思うほど貴重な機会でした。
今後の予定などは?
反田さんは凱旋コンサートを行っていましたが、今後もソリストや指揮者やプロデューサーとして公演を予定されています。
小林愛実さんも2022年2月1日のショパンコンクール入賞者ガラコンサート。
2022年5月29日大阪での波切ホールでの入賞記念コンサートなど、演奏を生で聞く機会があります。
ぜひショパンコンクールでの感動を味わってください。
アララン